連載「がんの休眠療法」第11回 がん休眠療法と免疫療法|東京都中央区銀座並木通りクリニックは内科・外科・呼吸器科の一般診療とがんの外来治療(腫瘍内科・緩和ケア内科)中心のクリニックです

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1.免疫療法の最近の動向および自家がんワクチン療法について
2.からだにやさしい少量抗がん剤治療について

連載「がんの休眠療法」第11回
がん休眠療法と免疫療法

免疫療法について

がん組織を顕微鏡で見てみると、がんの中・周囲にたくさんのリンパ球が集まってきており、腫瘍免疫を肉眼的に確認できます。がん細胞に対して一生懸命戦っているように見えるため、

「おおっ、免疫細胞たち……お前ら、がんばってんなぁ……」

と、プレパラート(顕微鏡で観察するための標本のこと)を見ながら思います。

胃がんでがん病巣にリンパ球浸潤が著明なタイプがありますが、実際にリンパ球浸潤の少ないモノよりも治療成績がいいことが知られており、腫瘍免疫ががんに対して働いているためだと推察されています。

免疫療法は、身体の免疫力を高めて、あるいは免疫の力を利用してがんをやっつけてやろう、というコンセプトの治療法です。がん治療の3本柱である外科切除・抗がん剤治療・放射線治療による治療成績に頭打ちを感じるためか、最近、「免疫療法」はそれら3本柱の次の一手として注目されています。

ほんの数年前までは、「免疫療法なんて効かない」と一笑に付される傾向が強かったものが、最近、ペプチドワクチンやがん抗原タンパクワクチンといった“がんワクチン”の登場により、そしてこれらが大学の臨床試験で広がりを見せていることなども手伝って、免役療法そのものの認知度や受容度・理解が以前より高くなってきています。

免疫療法全体に対する現時点の評価としては、まだ実験段階で未知数の部分も多いため、今後のさらなる発展が期待される分野と言えるでしょう。

抗がん剤治療と免疫療法は相対(ケンカ)するか?

前述のがん治療の3本柱が、必要に応じて併用しながら治療戦略を組み立てているのと同様に、免疫療法も現存の治療法と併用できる道を探れないかという思いが以前よりありました。

特に、抗がん剤治療と免疫療法は併用できないと言われてきました。片や免疫力を下げる、片や免疫力を利用してがんを治療しようというものでまさに“真逆”ですから、本来仲良くはなれません。

G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子 granulocyte-colony stimulating factor)という白血球を増やす薬剤があります。

「白血球数が下がっているので、白血球を上げるクスリを使いましょう」

と、肩への注射を抗がん剤治療を受けたことのある患者さんの多くが経験しているのではないでしょうか。標準抗がん剤治療を行うときG-CSFはなくてはならないといっても過言ではない薬剤です。

また、標準抗がん剤治療を行った際にG-CSFを1週間以上投与し続けても白血球が上昇してこないため、ヒヤヒヤした経験のある医師は私だけではないはずです。

一方、休眠療法の特徴の1つとして免疫力が下がらないというのがあります。

正確には、免疫力を下げないように抗がん剤の投与量をコントロールします。ですから休眠療法ではG-CSFのお世話になることは稀です。仮に、使用したとしても1回投与で十分で、標準抗がん剤治療のように頻回に必要になることはありません。休眠療法は免疫力を下げないため、免疫療法との併用が可能と考えています。

免疫化学療法という分野へ

当院では、免疫療法の1つである自家がんワクチン(セルメディシン)を患者さんの希望があれば休眠療法と併用して行っています。

自家がんワクチンは、手術で摘出されたがん組織(手術摘出標本、約2g必要)からがんワクチン(ペプチド)を生成し、体内のキラーリンパ球を活性化する治療法です。

本療法は理化学研究所、細胞開発銀行元主任の大野忠夫博士のホルマリン、パラフィン固定組織から抽出されたがん抗原に誘導された細胞障害性T細胞(CTL:cytotoxic T lymphocyte)の抗腫瘍細胞効果に関する基礎実験(Nature Medicine 1995)から始まり、筑波大学脳神経外科・泌尿器科、東京女子医科大学脳神経外科での臨床試験を経て現在に至っている治療法です。

ワクチン作成に必要な組織は、ホルマリン漬けでもパラフィン包埋ブロック(がん組織を蝋で包んだ塊状の標本)でもできますので、新たにがんの手術を受けなくても、以前の手術で摘出した患者さん自身のがん組織があればワクチン作成が可能というのが魅力です。

逆に、自家がんワクチン療法はワクチン作成の原料となるがん組織がないもしくは少ない場合、また医療機関に保管してあるパラフィン包埋ブロックに余裕がない場合(パラフィン包埋ブロックは公的財産でもあるため)は残念ながらワクチンの作成はできません。

図は、膵臓がん術後の腸間膜リンパ節転移に対して休眠療法と自家がんワクチンを併用した症例です。膵臓がんは予後の悪いがんとして有名です。

特に、上腸間膜動脈周囲のリンパ節転移の存在は膵臓がんの術後成績を決めるキモになります。提示症例では、上腸管膜動脈リンパ節転移巣が長期不変状態になっています。長期不変ですから引き分けです。患者さんはとても元気に日常を送られています。

休眠療法が効いているのか、がんワクチンが効いているのか、併用効果なのかを確定することはできませんが、ジェムザール単剤(1,000mg/body/隔週投与)で1年以上も膵臓がんの転移が押さえられているというのはそうある話ではなく、ワクチンとの併用効果ではないだろうかと推察しています。

当院でのがんワクチン療法と休眠療法の併用効果に関しては、こういった症例報告レベルでお見せできるものが少しずつ出てきているといったところです。

免疫療法が今後のがん治療戦略の一端を担うのは間違いないことです。さらに免疫療法と抗がん剤を併用した免疫化学療法は、国際学会でも盛んに取り扱われ始めています。免役化学療法は今後とも大きく注目される分野であり、その動向を見守っていきたいと思います。

月刊誌「統合医療でがんに克つ 2009.5 vol.11」より

月刊誌「統合医療でがんに克つ」連載 がんの休眠療法

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